はじめに
読者の不安に寄り添って
「家の軒下に蜂の巣を見つけてしまった」「子どもやペットが刺されないか心配」「自分で駆除できるのか、それとも業者に頼むべきか…」――もし今、そんな状況に直面しているなら、とても不安で落ち着かない気持ちだと思います。特に蜂の巣を見つけたときは、費用のことや、危険性、そして「信頼できる業者を選べるか」まで頭を悩ませますよね。
私はこれまで25年以上にわたり、全国で蜂の駆除を専門に行ってきました。その経験から断言できるのは、蜂の巣撤去は「正しい知識と準備」さえあれば安全に対処できるケースもある一方で、「一歩間違えば命に関わる危険」を伴うということです。このページでは、私が現場で実際に体験してきた事例や、五感で感じてきたリアルな現場の空気を交えながら、蜂の駆除の正しい知識と選択肢をお伝えしていきます。
執筆者・監修者について
自己紹介:生活案内所 大塚
はじめまして。生活案内所で全国担当マネージャーを務めている大塚と申します。蜂駆除の現場に立ち続けて25年、年間施工件数はおよそ1,200件以上にのぼります。これまでスズメバチ、アシナガバチ、ミツバチなど、あらゆる種類の蜂と向き合い、一般のご家庭から大規模な施設、さらには山間部の危険な現場まで幅広く対応してきました。
私が駆除の仕事を始めたのは、若い頃に近所のお年寄りがスズメバチに襲われたのを目の当たりにしたのがきっかけです。あのときの緊迫した空気、羽音が鼓膜を突き破るように響き渡る感覚、そして恐怖で立ちすくむ姿を忘れることはありません。「自分が役に立てるなら」という気持ちで蜂駆除の道に飛び込み、以来25年、蜂の巣と向き合い続けています。
現場では常に五感を研ぎ澄ませています。夏の炎天下で立ち昇るアスファルトの熱気と混じる蜂のフェロモンの匂い、耳元で突風のように迫る羽音、肌をかすめる風圧――それらは危険のサインでもあり、同時に冷静な判断を下すための情報でもあります。私はそうした現場の感覚を言葉にして、この記事で皆さんに「机上の知識だけではわからない本当の安全対策」をお伝えしたいと思います。
監修と資格について
蜂の駆除を考える前に知っておくべき基本
私たちの蜂駆除は、一般財団法人日本環境衛生センターの指導要領に基づいた安全で確実な方法を採用しています。防除作業監督者の資格を有し、自治体や消防と連携した活動も行っています。記事内の情報は、すべて現場経験と専門知識に裏付けられたものですので、安心して読み進めてください。

冷静に状況を把握することが第一歩
蜂の巣を見つけたとき、多くの方は「すぐに叩き落としたい」と衝動に駆られます。しかし、実際に現場で対応してきた経験から言えるのは「慌てて手を出すことが最も危険」だということです。蜂の種類や巣の大きさ、設置場所、そして季節によって、取るべき対応は大きく変わります。ここからは、私が全国で駆除を行ってきた体験を交えながら、蜂駆除の基本を整理していきましょう。
蜂の種類による危険性の違い
アシナガバチの特徴と現場での実感
アシナガバチは軒下や庭木など、比較的身近な場所に巣を作る種類です。巣はシャワーヘッドのように六角形の穴が並び、初めて見る方でも特徴的な形で気づきやすいでしょう。性格はスズメバチほど攻撃的ではありませんが、巣に近づきすぎれば容赦なく刺してきます。
ある年の春、横浜市の住宅で直径5cmほどのアシナガバチの巣を撤去したとき、家主の方は「まだ小さいし自分でやろうかと思った」と話していました。しかし、実際に防護服を着て近づくと、数匹が素早く飛び出してきて私の面を叩きに来ました。小さな巣でも油断できない、ということを痛感した現場です。

ミツバチの特徴と対応の難しさ
ミツバチは基本的に温厚で、人を積極的に攻撃することは少ないですが、巣の規模が大きくなると撤去は難航します。巣は板状で、内部に蜜や幼虫がびっしり詰まっており、撤去後の処理が重労働になることもあります。
私が記憶しているのは、京都の町家で壁の内部に入り込んだミツバチの巣です。解体すると甘い蜜の匂いが部屋中に広がり、近隣の蜂まで呼び寄せてしまいました。お客様は「自然の香りでいいですね」と笑っていましたが、実際は大量の蜂が集まる危険な状況。こうしたケースは必ず業者が対応すべきです。

スズメバチの危険性は別格
スズメバチは日本に生息する蜂の中で最も危険です。攻撃性が高く、毒も強力で、集団で襲いかかってくる習性があります。毎年ニュースで被害が報道されるほどで、素人が近づくこと自体が命の危険を伴います。
私自身も数えきれないほどスズメバチの巣を撤去してきましたが、忘れられないのは長野の山間部での作業です。直径30cmを超える巣から数百匹のスズメバチが一斉に飛び立ち、真夏の湿った森に羽音が木霊しました。ヘルメットを叩きつけるように何度も突進され、視界が揺れる中で作業を続けたのを今でも鮮明に覚えています。こうしたケースは絶対にプロに任せてください。

巣の大きさ・場所から判断するリスク
巣の大きさによる危険度
小さな巣(直径5cm程度)であれば、女王蜂だけ、あるいは働き蜂が数匹しかいない場合もあります。こうしたケースでは条件次第でDIY駆除が可能です。しかし、直径が10cmを超えると中の蜂の数も増え、攻撃性が一気に高まります。特に夏以降の巣は爆発的に拡大するため、素人の手に負えません。
設置場所によるリスク
巣が庭木や低い軒下にあればまだ見通しが利きますが、壁の中や屋根裏、高所にある場合は非常に危険です。足場が不安定な状態で蜂に襲われると、転落事故につながるケースもあります。私は過去に、屋根裏で作業中にスズメバチの逆襲を受け、出口が塞がれかけたことがありました。冷や汗をかきながら別の小窓から脱出した経験から、閉鎖空間の駆除は必ずプロに依頼すべきだと強調しています。
蜂の活動時期と撤去に適したタイミング
春(4〜5月)|小規模な巣なら駆除可能
越冬した女王蜂が単独で巣を作り始める時期です。巣は非常に小さく、攻撃性も低いため、条件が整えばDIYでの撤去が可能です。実際、春に依頼を受けると「女王蜂1匹だけ」という現場も多く、短時間で安全に対応できます。
夏(6〜8月)|急速に巣が拡大
働き蜂が増えて巣が一気に大きくなる季節です。羽音も大きくなり、巣に近づいただけで威嚇してくる個体も現れます。DIY駆除のリスクが高まり、業者依頼を検討すべき時期です。
秋(9〜10月)|最も危険なシーズン
蜂の数がピークに達し、新女王蜂やオス蜂が巣を守るために非常に攻撃的になります。私が秋に駆除した現場では、50メートル離れた場所からでも警戒して飛び出してくるケースがありました。この時期は自分での撤去は絶対に避けるべきです。
冬(11〜3月)|空の巣を撤去可能
働き蜂は死滅し、新女王蜂だけが越冬のために巣を離れます。空になった巣は安全に撤去できますが、中に死骸が残っていることもあるので注意が必要です。放置しても再利用されることはありませんが、翌年の予防策として取り除くと良いでしょう。

蜂の巣を自分で撤去する場合の条件と手順
DIYが許される条件
私の経験から、自分で撤去できるケースは限られています。以下の条件をすべて満たす場合のみ、慎重に検討してください。
- 蜂の種類がアシナガバチであること(スズメバチは絶対NG)
- 巣が直径10cm未満の初期段階であること
- 巣の場所が低所で足場が安定していること
- 刺された経験がなく、アナフィラキシーのリスクが低いこと
DIY撤去の手順
夜間(完全に暗くなった後)に、防護服や厚手の服装・手袋・長靴を着用し、蜂駆除専用スプレーを用意します。巣の入り口に十分噴射し、蜂の動きが止まったことを確認したら、棒や網を使って巣を落とし、丈夫な袋に二重に入れて処分します。必ず逃げ道を確保してから行いましょう。

業者に依頼すべきケースと費用相場
業者に任せるべき具体例
以下のようなケースでは必ず業者に依頼してください。
- スズメバチの巣を発見した場合
- 直径20cmを超える大きな巣
- 高所や壁の中、屋根裏など閉鎖空間の巣
- 人通りの多い場所にある巣(学校・公園・道路沿いなど)
費用相場表
蜂の種類 | 費用相場 |
---|---|
アシナガバチ | 8,000円〜15,000円 |
ミツバチ | 10,000円〜20,000円 |
スズメバチ | 15,000円〜30,000円以上 |

自治体の支援制度
自治体によっては蜂の巣撤去費用を助成したり、防護服や道具を貸し出してくれる場合があります。例えば、国民生活センターでも「高額請求のトラブル注意喚起」がされています。必ずお住まいの自治体の環境課・衛生課に確認してみてください。

再発防止策
撤去後の対策
巣を撤去した場所を清掃し、蜂の匂いを消すことが重要です。洗剤でブラシ洗浄したり、忌避剤を散布すると効果的です。壁の隙間や換気口はコーキングで塞ぎましょう。
蜂を寄せ付けない環境づくり
庭木を剪定して風通しをよくし、甘い飲み物や食べ物を屋外に放置しないこと。さらに、ミントやゼラニウムなど蜂が嫌う植物を植えることも有効です。定期的に家の周囲を点検し、小さな巣のうちに対応するのが最も安全です。

蜂駆除に関するよくある質問
Q1. 蜂はいつ活動が活発になりますか?
春から秋にかけて活発になり、特に夏〜秋が最も危険です。
Q2. 夜間に撤去するのはなぜですか?
蜂が巣に戻り活動が鈍くなるため、駆除効率が高まり安全だからです。
Q3. DIY駆除で必要な服装は?
厚手の長袖長ズボン、長靴、手袋、フェイスガード。色は白系が望ましいです。
Q4. 巣を撤去した後、蜂は戻りますか?
一時的に戻ってくる蜂もいますが、巣がないと判断するとやがていなくなります。
Q5. 業者を選ぶ際の注意点は?
明確な見積り・実績・保険加入の有無を確認してください。
Q6. 自治体に相談すれば無料で駆除できますか?
自治体によっては無料や助成あり。ただし対象がスズメバチに限定されることも多いです。
Q7. 蜂駆除スプレーは市販品で十分ですか?
小規模なアシナガバチの巣には有効ですが、大型のスズメバチには効果が不十分です。
Q8. 駆除後に再発を防ぐには?
匂いを消す清掃・忌避剤の散布・庭木の剪定・隙間の封鎖が有効です。
Q9. 蜂に刺されたらどうすれば?
患部を流水で洗い、ポイズンリムーバーで毒を吸い出し、速やかに病院を受診してください。
Q10. 高額請求を避けるには?
国民生活センターの情報を確認し、事前に複数業者から見積もりを取りましょう。
まとめ
安全第一で判断を
蜂の駆除は種類・大きさ・場所・時期によって取るべき対応が変わります。小さなアシナガバチの巣であればDIYも可能ですが、スズメバチや大型の巣、高所・閉鎖空間の巣は必ずプロに任せましょう。あなた自身と周囲の安全を守るために、正しい知識と判断が欠かせません。

免責事項
ご利用にあたって
この記事は私の現場経験と公的機関の情報をもとに執筆していますが、全てのケースで完全な安全を保証するものではありません。実際の駆除に際しては、必ず状況を正しく判断し、危険を感じた場合は即座に作業を中止して専門業者へご依頼ください。
